全派閥クリア済み、総プレイ約1600時間以上のレビューです。レビュー執筆時点でのバージョンは0.3.138になります。
最高の世界観、至高のゲームコンセプト、煩雑なゲームシステム、課題の多いゲームバランス、etcと色々発展途上なゲームであり、オススメにはしています。ですが、現状は[b]様子を見た方が無難[/b]でしょう。
というか「保護領」が残念すぎですが、あれはEAだから修正中という認識で良いんでしょうか?
[h1]概要[/h1]
本作は「エイリアンから地球を守る秘密結社ごっこ」が出来る意識高い系シミュレーションです。世界観やSF考察が大変素晴らしく、ロールプレイや読み物としてのデキも最高な一方、4Xジャンルのゲームとして見ると作り込み故の複雑さやテンポの悪さが目立ちます。
1プレイのクリアまでに長い時間を要するのも特徴で、選んだ派閥や進め方で30~300時間はかかります。中盤以降の展開が最もダレやすく、プレイヤーのモチベーションを削ぐ要素も盛り沢山です。デバッグやテストプレイも困難なのか、EA開始から1年半経ってバージョンがようやく0.4に上がったくらいです。
[h1]ストーリー[/h1]
2022年9月、外惑星の彼方から地球外生命体の船団がやってきた。時を同じく、地球に飛来する未確認飛行物体。世界中の権力者達は団結して、この危機に立ち向かう筈だった。しかし、利害や思想の違いにより、彼らは7つの派閥に分裂、各派閥は己の正義を信じて人類を導こうとする。
[h1]ルール[/h1]
プレイヤーは7つの派閥から1つを選び、他の派閥と協力あるいは敵対しつつ、派閥毎に定められた勝利条件を達成すればクリアとなります。各派閥にはエイリアンに対するイデオロギーがあり、これは他派閥との交渉難度や勝利条件の違いとして現れます。
[h1]操作可能な派閥[/h1]
・レジスタンス(抵抗)「難易度:★★」
映画インディペンデンスデイの展開を地で行く勢力で、7派閥の中で主人公的なポジション。制作側からも初心者向け派閥とされています。エイリアンを太陽系から追い出すことを目的としており、地球・宇宙の両方で侵略者の駆逐を目標としています。エイリアンさえ退治出来れば良い為、難易度は普通です。
・人類優先(破壊)「難易度:★★★」
エイリアンとそれに味方する人間の抹殺を目論む極右集団です。エイリアンと親エイリアン派閥の打倒が目的で、レジスタンスよりもタスクが増える為、難易度はやや高めです。
ゲーム進行には関係ない話ですが、派閥の代表者であるハンス大佐は、海外では人気キャラです。
・イニシアティブ(搾取)「難易度:★★★★」
エイリアン到来を利用して利権拡大を企む、悪の企業です。エイリアンの駆逐以外にも地球を6割ほど征服することが目標となり、高難易度です。
また、エイリアンが生み出す巨大生物を唯一操ることが出来る派閥でもあります。
・プロジェクトエクソダス(脱出)「難易度:★」
地球はもうダメなんで、とっとと移住しようぜという事業団です。最終目標は太陽系脱出用の宇宙ステーションを建造することで、これには膨大な研究期間と建造資源と建造時間を必要とします。
一方で地球を見捨てても構わない、つまり防衛する必要はない為、難易度は低めです。
・アカデミー(協力)「難易度:★★★★★」
エイリアンに人類の実力を認めさせ、星間同盟を結ぼうという高い理想を持った学会です。エイリアンの駆逐以外にも地球の7割を支配する必要がある上、大半の犯罪組織が利用不可になっています。難易度は7派閥の中で最も高いです。
星間同盟という響きにスタートレック味があり、海外勢には特に人気の派閥です。
・しもべ(服従)「難易度:★」
エイリアンと心を通わせ、文字通り彼らの下僕になろうというカルト宗教です。エイリアン国家の樹立を手助けし、最終的に地球全土の6割以上を彼らに明け渡すことが目標になります。
エイリアンが味方してくれる唯一の派閥であり、難易度は極めて低いです。
・保護領(懐柔)「難易度:?????」
エイリアンに降伏して、その引き換えに地球の自治を求める組織です。しもべと同じくエイリアンと交渉可能ですが、彼らとの関係は基本中立になります。保護を名目とした地球征服が目的で、地球を6割ほど掌握する必要があります。海外勢も含め、最も不人気な派閥です。
降伏が目的なのにゲームの仕様上、エイリアンと戦う必要があり、意味不明な戦略を強いられます。(面倒だが直接戦わなくても済む方法はある)
[h1]派閥の支配下にあるもの[/h1]
各派閥は以下3つの要素を支配下に置いています。それぞれに指示を出して、ゲームを進めていきます。
[b]評議員[/b]
ゲーム開始時は2名、最大6名で構成される派閥の中心メンバーです。一カ月に2~3回任務を出せます。各評議員には、各国の支配権を掌握するミッションや、他派閥への妨害ミッションなど、種々の任務を遂行させ、派閥を強化していきます。
また、評議員達はミッションの結果に応じた経験値を獲得します。この経験値を消費して各種ステータスの上昇や特性追加が可能です。評議員のステータス値の合計が派閥の強さに直結するので、暇になっても適当なミッションをあてがい、経験値を貯めるクセを付けておきましょう。
[b]地上軍[/b]
各国家に所属する軍隊には防衛軍と攻撃軍の2種類が存在し、派閥が指示を出せるのは攻撃軍の方です。
他派閥が支配する国家への侵攻、あるいは地球へ降下してきたエイリアンを迎撃する為には地上軍が必須です。地上軍の強さは、その国家の「軍事技術」のレベルがそのまま比例するので、どの国家の軍隊を使うかはよく考えましょう。
また、地上軍は所属する国家が他派閥に支配されると、軍の指揮権もその派閥に移ってしまうので注意が必要です。ゲーム開始時は、いずれの派閥も国家を支配していない状態なので、序盤に中~大国をどれだけ確保出来るかで中盤以降の流れが決まります。しかし、派閥にはCP(コントロールポイント)の上限値が存在します。国家を支配するほどこの値が蓄積していき、この上限を超えると各種ペナルティを受けます。
[b]宇宙軍[/b]
宇宙艦隊単位で構成される軍で、地上軍とは異なり派閥の直接管理下に置かれます。評議員とも異なり、惑星間移動をしていない場合に限り、好きなタイミングで指示が出せます。宇宙船は、まず設計を行い、生産が完了したら配備が可能となります。さらに配備後も現在地と目的地との距離や公転、移動時の速度や燃料消費など、あらゆる要素に影響を受けるので、慣れるまで苦労するかも知れません。しかし、エイリアンの前線基地は宇宙にあるので、絶対に慣れる必要があります。
また、派閥にはMCP(ミッションコントロールポイント)と呼ばれる上限値が存在しており、艦隊を配備するほどこの値が増加していきます。勿論、上限を超える配備はペナルティを受けることになるので、これに気を付けつつ最終的に太陽系を掌握出来る屈強な宇宙艦隊を作り上げることが、派閥の大目標になるでしょう。
[h1]派閥の資産となるもの[/h1]
派閥は以下3つの資産を運用することが出来ます。
[b]下位組織[/b]
各派閥はユネスコや世界保健機関などの有名な組織を、資金や影響力を消費することで「購入」し、各評議員に「装備」させて強化することが可能です。勿論、不要になった組織は売却も出来ます。ただし、装備条件が指定されている組織があります。
[b]宇宙ステーション[/b]
作るのは大変ですが、ステーション1つにつき小~中国家レベルの利益を派閥に与えてくれる重要な財産です。ゲーム中盤になると構成モジュール次第で、大国レベルの生産力を叩き出すので、ゲーム終盤になると水星や木星がステーションで埋め尽くされる様子は、もはや本作の風物詩と言えるでしょう
宇宙ステーションには惑星表面に作るものと、惑星軌道上に作るものと2種類存在しますが、構成モジュールやステーション内の人口に応じたリソースが要求されます。また、宇宙軍と同じで宇宙ステーションもMCPが蓄積していくので、作り過ぎは厳禁です。
[b]各種リソース[/b]
資金や影響力やオペレーション値、CPやMCP、地球外惑星から獲得可能な資源など、派閥は全13種類のリソースを管理します。詳しくはコーデックス(ゲーム内ヘルプ)で確認下さい。これらは前述した評議員・宇宙ステーション・下位組織・支配下にある国家、そしてエイリアンや他派閥の宇宙艦隊を撃破時に獲得可能です。リソースは多ければ多いに越した事はありませんが、ゲーム開始直後は資金と影響力の2つだけを気にしていれば大丈夫です。
[h1]ゲームの進め方[/h1]
エイリアン騒ぎで世界が大パニック状態になっているところからゲームが始まります。プレイヤーが担当する派閥も、活動を始めたばかりで貧弱極まりない状態です。どの派閥も最初は、地球各地で暗躍する少数のエイリアン達の痕跡を辿りつつ、彼らと交渉あるいは暗殺・捕獲を目標として行動します。並行してエイリアンあるいは敵対勢力との全面戦争に備えて、国家を掌握していき、科学技術の発展、宇宙産業の拡大、及び宇宙軍の創設に着手していきます。
[b]序盤にすること[/b]
ゲームを開始したら、すぐに評議員を増員して4名体制とします。基本は誰を雇っても問題ありませんが、ゲームに慣れない内は「説得(Persuasion)」「司令(Command)」「行政(Administration)」の3つの能力値が高い評議員を採用しましょう。この数値の合計値が、そのままCPの上限値になるからです。
[b]研究について[/b]
5人目以降の評議員を採用するには研究を行う必要があります。また、エイリアンの発見・接触・交渉or捕獲or暗殺、そして強力な宇宙艦隊を作り上げる為にも研究は必須です。研究には「国際研究」と「評議会エンジニアリングプロジェクト」の2種類が存在し、前者は自派閥を含めた7派閥の共同出資により進行します。一方「評議会エンジニアリングプロジェクト」は、派閥内でのみ出資可能な項目で、基本はここに出資することで派閥を強化するのですが、この研究を進める為には先に「国際研究」を進めなければいけません。
研究の出資に使うリソースは資金ではなく「研究ポイント」と呼ばれる数値になり、「評議員が持つ研究ポイント」と「派閥が支配している国家の研究ポイント」を合算したものになります。出資の割合は、かなり大雑把にしか調整出来ませんが、1項目に全て出資あるいは全く出資しないといったことが可能です。
[b]国家の掌握について[/b]
派閥が持つ研究ポイントは、序盤はほぼ0なので、有望な国家を掌握してポイントを稼ぎましょう。国家を派閥の支配下に置くには評議員を使って、対象国家に対して国家コントロールを実行させる必要があり、相手が大国である程、その成功確率は下がります。成功率は国家の総人口、派閥の支持率、実行する評議員の「説得」値といった種々の要素により決定される為、大国ほど優秀な評議員が要求されます。
敵派閥に大国を奪われた場合、取り返すのも至難の業です。評議員が弱い序盤は、敢えて手を出さない方が無難でしょう。単純に研究ポイントだけを見れば、狙い目はアメリカ合衆国なのですが、掌握と維持が大変です。お手頃なのは東南アジアやオセアニア地域でしょう。フィリピンとインドネシア以外は比較的、安定しており統治しやすいです。
[b]宇宙ステーションについて[/b]
国家を支配し、研究が進み、宇宙進出の準備が整ったら、いよいよ宇宙開発事業に駒を進めましょう。宇宙軍を作る為にも宇宙ステーションは必須です。宇宙ステーションを建造する方法は以下3つありますが、最初は1の方法しか使えません。
1.地球で作って宇宙に打ち上げる
これにはブーストと呼ばれる資源が必要になります。ただし、建築対象の施設レベルに比例して大量のブーストを消費することになるので、ゲーム中盤から枯渇しやすくなります。完成までにかかる期間も「現地が地球からどれだけ離れているか」と「作ろうとする施設の重量(最低単位は1トン)」に比例します。月なら大した期間にはなりませんが、海王星や冥王星になると余裕で10~20年かかります。後述する現地での建築に切り替えていきましょう。
2.現地で作る
宇宙資源を所有していること、そして宇宙ステーション内に「建築プラットフォーム」「ナノファクトリー」「ナノファクトリー複合施設」のいずれかが最低1つ存在する必要があります。条件を満たしていれば、ブースト無消費となり、地球との距離は無関係になり、建築期間も短縮されるので、地球の情勢や距離に左右されずに宇宙開発に注力出来ます。
3.宇宙軍に運んでもらう
現地で作る場合でも、専用の宇宙施設が事前に必要になる都合、最初は必ず1の方法を使わないといけません。
つまり、まだ誰も手を付けていない未開の惑星に入植するにはブーストの消費が必須になります。これを避けるには、後述する宇宙船の建造において、建築キットを搭載した艦を製造、その船を直接入植先の惑星まで移動させることで最初の施設を作ることが出来ます。木星以降の惑星に施設を建てるなら必須事項となるでしょう。
[b]国家予算について[/b]
色々あって良く分からないと思いますが、宇宙ステーションを作るにはブーストやミッションコントロールが必要なので、これらの項目へ投資を優先しましょう。社会不安が高くて格差が「中」以上の場合、福祉にも投資しましょう。格差が低くなれば国家は安定します。社会不安を放置していると後述のクーデターが発生します。
[b]クーデター[/b]
国家の支配権がリセットされる恐怖のバッドイベントです。自然発生するものと派閥により意図的に起こされるものと2種類存在します。前者は国家の社会不安が高いほど発生しやすく、これは国家が安定しているほど低下、逆であれば上昇します。格差が低く、GDPが高いほど安定、これが逆だと不安定となります。後者は国家の社会不安に加え、政治家たちへの賄賂が少ないほど成功率が高くなります。「戦利品」へ投資を行うことで敵派閥からのクーデター工作を抑制することが可能です。
ゲーム中盤以降はクーデターの応酬が平然と行われるカオスな展開になりやすいです。
[b]宇宙軍の設計と生産と運用[/b]
宇宙船を宇宙ステーションで生産する前に、まず設計を行う必要があります。宇宙船は複数のパーツで構成されますが、重要なのは武器(主砲・副砲)と推進装置です。どんなパーツを組み合わせるにしても、まずは予め研究が必要になります。
基本は「核融合エンジン」「赤外線フェーザー砲」の組み合わせが鉄板です。大型艦なら最強兵器「プラズマ砲」の搭載も検討しましょう。プラズマ砲は最強ですが、高コストであることと小型艦には搭載出来ないという欠点があります。
宇宙船は、常に何処かの艦隊に所属している必要があります。よって生産直後の船は、自分しかいない臨時の艦隊に所属しているので、すぐに味方の艦隊と合流させましょう。艦隊の準備が整ったら早速、目的の場所へ移動させればよいのですが、ここでも注意事項があります。艦隊は待機可能な場所にしか移動させることが出来ません。そして、艦隊が待機可能な場所とは惑星または衛星の軌道上です。つまり軌道から軌道への移動しか出来ず、例えば地球と火星の中間にある、何もない空間に静止することは不可能です。
エイリアンあるいは他派閥の船と接触したら戦闘するか判断します。お互いに戦闘することになったら4つの戦闘方針(陣形や配置傾向など)を選択すれば、いよいよ戦闘の始まりです。特に策がなければ左から「集中」「大壁」「射撃」「中央」の組み合わせにしましょう。
[b]最終勝利条件の達成[/b]
人類を宇宙に進出させ、エイリアンに対抗出来る宇宙艦隊が完成したら、後は派閥毎の勝利条件を満たす立ち回りをするだけです。条件は派閥毎に異なりますが、主に「敵対派閥との宇宙戦力比率」と「派閥による地球の支配率」が大きく関わります。難易度が高い派閥ほど多くを求められるので、中盤以降から意識して派閥を運営していきましょう。
[h1]外交について[/h1]
他派閥と交渉を行うことで、必要物資の獲得や関係改善が可能です。交渉は物々交換により行われ、提供する物資に対して要求する物資が釣り合っていれば交渉は成立します。釣り合っているかどうかは相手のメッセージを見れば分かるので色々試しましょう。派閥によっては交渉が困難な相手も存在しますので留意しておきましょう。
関係が良好ならリソースや下位組織、果ては宇宙ステーションが貰える可能性もあります。さらには不可侵条約を締結して相手派閥からの攻撃を逸らすことも出来ます。ちなみに前述したブーストはゲーム中盤以降から余りやすく、しかしながら外交では比較的良いレートで取引されるので活用しましょう。
[h1]微妙な点[/h1]
ゲームテーマは最高ですが、それは序盤だけです。ゲームそのものが「遊びやすさ」を軽視した作りで、途中から色々な不満が出やすいです。まず目につくのはUIの酷さですが、それ以上に厄介なものとして派閥が消滅しない点があります。
敵味方を含め、派閥は消滅しないのでゲームオーバーが存在しない(詰みはある)のですが、敵も不死身であることを意味します。敵派閥を徹底的に弱体化させても、復活してスパム行動を繰り返すようになり、ゲーム後半になるほど面倒な存在となっています。
そして彼らは上位勢力となった派閥への妨害を繰り返し、他派閥と潰し合いをして結果的に中途半端な戦力しか持ちません。この仕様が皮肉にもプレイヤーを(仕方なく)活躍させる為のお膳立てとなり、プレイヤーの取るべき戦略を限定的なものにしています。さらに、勝利条件を満たそうと自軍を強化すると、エイリアンを含めた全派閥から謎の集中攻撃を受けるモグラ叩きシステムとなり下がり、しかもそのモグラ達は全員不死身なので、ゲーム終盤のプレイヤーへのストレスは最高潮に高まります。
ゲーム中盤以降は勝利条件を満たす為、他派閥の支配国を「粛清」「クーデター」ミッションで奪い合う展開になるのですが、前述のモグラ叩きが台無しにしてくれます。リセマラしない場合は「3歩進んで2~4歩下がる」展開が続きます。
[h1]まとめ[/h1]
本作の開発陣は大型MOD製作者だそうですが、そんな人達が「自分達で1からゲームを作るんだ」と理想に燃えた結果が本作です。蓋を開けてみれば、そこには素晴らしい世界観と、苦悩とストレスが同居する不思議な作品がプレイヤーを待っています。
公式フォーラムではユーザーから多くの問題指摘と改善提案が出されており、開発陣も諸問題に関して理解はしながらも、改善はあまり進んでいない状況です。今後、改善が進むのか、それとも改悪が入ってしまうのか、あるいはどっちつかずな中途半端に落ち着くのか、これまでのアプデを見た感じだと期待は薄そうです。