お料理記憶ダイブアドベンチャー。
元のスマホアプリ版は基本無料(広告つき)だったという。
それならば「オススメ」していたかもしれないけれど、1300円のゲームとしてはなかなかどうして。
本作はざっくり分けて、前半と後半に分かれている。
前半部では、あの世とこの世の狭間に位置するレストランでウェイターのネコとなり、コックのクマさんが調理した料理を客(すなわち死にたてほやほやの魂たち)に提供する。オーダーは客が生前もっとも執着していたり思い出深かったりする食べ物となっていて、たまに注文に反して「おまえが本当に食べたかったのはこれや」とクマが強引に別の料理を出したりもする。
料理の詳細がわからないときは「ダイブ」と呼ばれる能力を使い、客の記憶へ潜り、料理に関する思い出を拾う。
この「ダイブ」が使えるのは注文を取るときだけではない。
ネコの自室で訪れた客たちの名簿を閲覧し、それぞれの死に様を垣間見ることもできるのだ。ここが本作のゲームプレイのキモのひとつとなっている。客の中には赤ん坊やネズミといったものたちもいて、それぞれ「見ていた風景」が他の客と同様に記述される。「万人に死は等しく訪れる」というこのゲームのコンセプトのようなものが透けて見える。
後半パートでは(ネタバレゆえに詳細は省くが)あるキャラが失踪してしまい、行方を追って”地獄”へと冥界下りをすることとなる。ここでは料理を行わなくなるものの、「ダイブ」要素は残っている。基本的に”天国”行きの客ばかりだった前半パートに比べて、”地獄”行きの人間たちは愉快でない人間が多く、そこがアクセントとして効いている。
そうして、前後半全体を通じて語られるのは”愛”の物語だ。どういった”愛”が、どのように演じられるのかは各自の眼で確かめていただきたい。
本作の大きな魅力として挙げられるのは、緻密であたたかみのあるクオータービューのドット絵だろう。マップこそ限定されているものの、キャラクターのアクションにもいちいち気が配られていて、本作のテーマ的には欠くべからざるエッセンスであろう人間味や親密さが宿っている。特に終盤にクマがネコに対して行うあるアクションは、ほんとうにさりげなくも心動かされるものがあった。
また、前述したように人間以外のキャラも登場するのだが、ドット絵のアクションの豊かさのおかげで人間のキャラに負けないパーソナリティが描かれているように見える。もっともそれは人間のキャラクタテリングの貧相さの裏返しでもあるわけだが……。
マイナス点は大きくせざるをえない。それは本作のコアの部分に関わることだ。
「ダイブ」機能によってキャラの生前の生活や死に様を見ることができる、と上に書いたが、そこのあたりの描写にセンス・オブ・ワンダーが欠落していてつまらない。
ビックリさせられるほどトンデモない死因があるわけでもないし、逆にリアルさが丹念につきつめられているわけでもない。
悪い意味で定型的でお話っぽい。
死を通じてキャラクターを描こうとする物語においてこれは致命的だ。前半部の終盤でそれまでの客たちが一堂に会する場面があるのだが、それぞれのキャラへ十全な感情移入が果たされていてこそ盛り上がるシーンであるのに、数十分前になんかいたなってやつらばかりなのでなんだか感情的にかみあわない。コンセプトは良いだけに、非常にもったいなく、はがゆく感じた。
寓話であること自体は否定しない。だが、寓話にも寓話の面白さというものがあり、それはどこかで見たような、物語全体のメカニズムからも外れたどうでもいいエピソードを並べることではない。
本作のアプリ版と同時期に、似たような「あの世とこの世の狭間にあるカフェ」というコンセプトでオーストラリアのディベロッパーが作った[url=https://store.steampowered.com/app/725270/Necrobarista/]『Necrobarista』[/url]というゲームがあって、あれはなにからなにまでピーキーでクセがあったけれど、あのくらいの個性があったほうがまだ遊べる気がする。
結果としてキャラクターにおけるストーリーのディベロップメントの不足が、ゲーム全体のストーリーの不足感にもつながっている。
本筋もあまりよく練られていてないのかな、と見受けられるところが多々ある。
特に後半部であるメタ的な仕掛けがなされるのだが、それがメタであることにびっくりするくらい意味が無い。本来であればゲームのメカニクスを自覚した上で利用する仕掛けであるはずなのに、本作ではその自覚がまるでどこかへ行ってしまっている。
劇中ではオタクの青年が作者の代弁なのかわからないゲーム評論(タイトルこそ変えられてあるが『FF』や『ペルソナ5』や『ラストオブアス』)が滔々と語られるのだが、『Undertale』や『NieR: Automata』についてもそれっぽい評を語っているのにそのプレイ体験を完璧に忘れてしまったかのような代物になってしまったのは疑問というか、困惑すらおぼえてしまう。
忘れがたい愛嬌や美点を具えた作品であることは間違いない。限りなく少人数でこれだけのクオリティのルックを作られるのは頼もしい。
ただ、自分の基準ではセールであっても選択肢に入るかはや微妙な作品だ。