クジラの子供を追跡した調査記録が淡々としたナレーションと美しいイラストで語られるSFグラフィックノベル。主人公であるクジラの誕生から始まる記録がモキュメンタリーになっていて、興味深い異星の生物相が精緻に描かれています。次々繰り出されるイラストの一枚一枚に見ごたえがあり、幻想イラスト集としても成立してしまう圧倒的なデザイン力に驚くばかり。
異星の調査ということでSF的な側面もあり、架空生物学的なTIPSや過去の調査員の逸話などに話がそれたりするのも面白い。そうかと思うと史実に則った部分もあったりします。計器類が表示されたデータや極秘書類がちらりと見えるところもあり、散りばめられた空想科学のエッセンスが格好いい。
チャプターに分けられたシナリオは雰囲気にとどまらずそれぞれに山場があり、新たな状況に直面して生活が大きく変わるさまは野生動物のドキュメンタリーそのもの。真に迫った効果音も臨場感を高めてくれます。イラストとシナリオ、音の演出が稀有なセンスでまとめられた芸術。