[h1][b]「そうして、彼女を守ることでボクは人を愛することを知った」
―『ニーベルンゲンの歌』[/b][/h1]
[h1]ストーリー[/h1]
生存者コミュニティ"ニューフロンティア"を旅立ち、少年A・Jと再会した少女クレム(クレメンタイン)
生ける死者"ウォーカー"が跋扈する世界にて、成長したA・Jとの楽しくも気が抜けない旅を続けるクレムだったが、ウォーカーの集団に襲われた際に寄宿学校を拠点にする生存者グループに救助される。
久しぶりの住居や寝床、温かい食事を与えられ、生存者である少年少女たちとも打ち解けるクレムとA・J。
そんな安穏とした日々を粉々に破壊する、ある出来事が起こる…。
[h1]概要[/h1]
ADV版ウォーキングデッド(以下「TWD」)の第4作にして最終章。
従来と同様4つのエピソードから構成された本作は、主人公クレムを操作して画面内の人物と会話したり、オブジェクトを調査するポイント&クリックを採用している。
また、キャラクターとの会話における選択肢(時間制限あり)によって一部ストーリーや同行キャラクター等が変更するマルチシナリオを採用しており、リプレイ性の高い内容となっている。
各エピソードの終わりには各主要人物のステータスが表示され、クレムの行動や選択によって彼ら彼女の生死やクレムに抱いている感情が把握できるため、それらを踏まえてプレイすることでストーリー進行に奥行きを出すことに成功している。
総プレイ時間は30~40時間。
ストーリー進行は基本リニアだが、上記のとおり選択肢や行動によって幅広く分岐する仕様となっている。
[h1]感想[/h1]
ADV版TWDの集大成であり、少女クレムの贖罪と救済の物語。
はじめに本作をプレイする際に心配になったことがある。それは登場人物のほとんどが少年少女という点だ。
「タフガイの主人公がポストアポカリプス世界にて逞しく生存する少年少女と手を組む」というプロットに、自分は映画[b]『マッドマックス/サンダードーム(1985)』 [/b]を連想してしまった。あれもいい作品だが、中盤以降はポストアポカリプスさは影を潜め、主人公と少年少女の交流に比重を置いたヌルい展開がハードな従来作を好むファンから難色を示されたのはご承知のとおりだ。
実際にプレイしてみた感想だが、上記のような不安は完全な杞憂であった。同時に従来作でも類を見ないハードな内容に度肝を抜かれた。全ては計算の上での設定だったのだ。
本作に登場する主人公クレム以下登場人物の多くが子供以上、大人未満のティーンエイジャーである。大人のように社会の規範や倫理観を刷り込まれているわけでもなく、かといって子供のような無軌道さもない。本作の作り手はそんな少年少女たちを既存の価値観が崩壊した世界に放り込むのである。
これが過去作の主人公だったリーやハビエルといった大人であれば、文明崩壊以前から有していた価値観や倫理観に従えばいいが、本作の少年少女にはそれがほとんど無いのである。そんな危なっかしい少年少女たちのささやかなユートピアも、あるキャラクターが起こす血も凍るような事件で破局を迎える。
「ポストアポカリプス」という価値観が崩壊した世界の恐ろしさを知らしめてくれる演出は見事だと思う。
同時に本作は主人公クレメンタインの旅の終りであり、これまでリーやケニー、ハビエルといった大人たちに守られてきた少女が逞しく成長し、今度は少年A・Jを守るその姿は感慨深くもあり、ある種の寂しさも感じさせる。全シリーズを通してクレムに感情移入をしてきた人は、彼女の最後の旅から目を離すことができないはずだ。
TWD最終章は、1人の少女の物語であり、同時にポストアポカリプス世界に放り込まれた人間のあり方を描いた哲学的な作品でもある。非常に良く出来たゲームだと思う。おススメ。
[h1]評価[/h1]
【GOOD】
・ゲーム版TWDの最終章に相応しい重厚なストーリー。
・プレイヤーの価値観を混乱させる巧みな演出。
・シリーズ屈指の表現力豊かなグラフィック。
【BAD】
・一部の高難易度QTEによるストーリーの停滞。
・スキップ機能の未実装による作業感の強さ。