JRPG的な“様式美”を完コピした中華製JRPG。
ここで言うJRPGは最近雨後の筍のようにボコボコ乱発されてる90年代~00年頃のSFC後期-PS期のレトロ風なゲームではなく、PS2期以降に日本国内で量産された方の和製RPGだ。つまり「JRPG」という単語を批判や蔑みの言葉として使用した際に連想されるJRPGである。
よって、個人的にJRPGに抱く苦手に思うところやダセェなと思うところも丸々移植されてる。
「ロールプレイングゲーム」の定義を問い詰めたくなるような振る舞いの選択肢のないシナリオ、無駄に冗長で棒立ちの美形がべらべら喋るだけのイベントシーン、作業じみたイベント戦闘の乱発、そのせいで無駄に長くなる退屈なプレイ時間、見た目は派手なのに移動の制限だらけで生活感がまったくないマップ、広いだけでセンスのないダンジョン…。昔は大好きだった和製RPGから少し距離を置いてしまった要因となる嫌なポイントが勢ぞろいだ。ゼロ年代以降の和製RPGが好きなユーザーからすれば気にならないのかもしれないが。
にも拘わらず本作をそこそこ楽しみながらクリアできた所以は、JRPGだけしか持っていない魅力的な要素がしっかり丁寧に作りこまれており、さらに元ネタとなった「日本で作られたJRPG」にはない新鮮な感覚もしっかり登載されているからだろう。
確かにビジュアル面では面白みのない金太郎飴な美男美女しか出てこないし、建物はいかにも偽物然とした嘘っぱちのハリボテかもしれない。だが、そこにはリアル礼賛主義(どっちかというと自分もこっちの派閥だが)では感じえない楽しみ方がある。いわばゲームにおける大衆向け映画であり、大衆向けドラマの世界観なのだ。売れっ子の俳優女優やアイドルでキャストを固め、派手でわかりやすい舞台設定やセットで観客の目を楽しませる。カメラを通して見た感覚でゲームに接することができれば、自分は違和感なく“違和感だらけの”JRPG的世界観も楽しめた。きっとエンディングのあとはクランクアップしたキャラクター達がホテルの宴会場で打ち上げでもしているのだろう。背景のデザインやアセットだって、たまにはこんな子供の夢を肥大化させたようなバロックなものがあっていいだろう。リアルな建築物を追求していては、この造詣には到達することはできまい。
更に無駄に凝ったクラフト要素や釣りなどのミニゲームなどJRPGあるあるの細かい遊びもしっかり登載されてる。クラフトや栽培は職人集めや体力管理など適度に面倒くさい要素を残して脳死作業にはなってないし、みんな大好きな料理システムもある。JRPGのミニゲームのお約束といったら釣りだが、ゲーム性は平凡なものの用意されている魚の種類とグラフィックが尋常ではなく、ついつい釣り場をみると(どんな緊迫した状況でも)釣り糸を垂らしたくなってしまう。
そんなJRPGのグッドポイント・バッドポイントをかなり高品質に移植しながら、非常に好ましい個性的な改変もされているのは流石である。
JRPGのシナリオといったら「恋愛」「仲間」を抜いてはほぼ語ることが敵わず、セカイを滅ぼす魔王や危機を対処させつつヒロインと綺麗な恋愛させて仲間との信頼やら友情やらでシナリオの盛り上がりが創られていく。別に否定するつもりはないが恋愛脳のない人間からすると一番辟易するポイントでもあった。
一方、古剣奇譚は安易にそんなボーイミーツガールなノリを持ち込まず、代わりにシナリオの主を占めるのが先祖信仰を基盤とした人間と神仙との時間を超えた信頼と憎悪の関係性だった。ご先祖様の信仰が身近にあったり、ヒトと神仙との距離感の在り方が非常に中華文化らしく、制作者の個性が出ていて素晴らしい。
キャラクターも比較的クセのない(逆に言えば味わい深さのない)性格ばかりだが、中国の妖怪や神仙の死生観や価値観・行動原理は独特のものがあった。数百年、数千年の時を生きる。人生観や道徳が中国古典的な格言や哲学で語られており、これは日本や欧米文化圏のファンタジーRPGの登場人物たちにの会話からは見出せない面白いものだった。
シナリオも(いつの時代かは測りかねるが)中世の中国を舞台にしているし、出てくるアイテムや術・技の数々もしっかりそれに馴染んでいる。ありがちなファンタジーアイテムは出来ない。エクスカリバーもロンギヌスも出てこない。剣も鎧も必殺技もアイテムも、全て中華風の世界観で統一されていて“JRPG的な偽物ファンタジー”に(添え物程度の)一貫性のある描写がなされている。前述の派手な背景や街並みも(天鹿城を除いて)しっかり中華風だ。
日本でも、こんな風に日本風の世界観に立脚した本気の(ゼロ年代風の)和製RPGがあっても良いはずだ! イケメン美少女だらけで偽物でハリボテな、カッコよくて豪奢な日本のファンタジー世界を遊んでみたい。そんな思いを起こさせる、海外製JRPGだった。
その他細かい感想
・釣った魚のフレーバーテキストはほぼ味について語られてるあたり、流石は中華料理の国のゲームといったところか
・イベント進行の為のバトルと回想シーンがマジでストレスフル
・料理が取れもとても美味しそう
・北洛はクール系イケメンだけど侠客っぽい義理深さもあってとてもクセのないカッコいい主人公だった。
・シナリオがごちゃごちゃするので用語集やシナリオ振り返り機能はありがたい
・敵がアホみたいに固いので戦闘の爽快感がなく地味…しかも油断するとすぐ死ぬ
・カードゲームがルールわからずクソ。オリジナルの役なんておぼられるか!麻雀させろ!
・邦訳は概ね理解する分には問題ないが、会話の話者の混乱がおこってて笑えるシーンが多々ある。ロリ娘が突然偉そうに喋り出す
・顔はホスト風イケメンだらけだが日本よりもみんなマッチョ。好みが出ているのだろうか。